血糖を下げるホルモンが、ひとつしかない理由

血糖を下げるホルモンが、ひとつしかない理由 健康・からだ

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血糖を下げるホルモンが、ひとつしかない理由

体の中には、血糖を上げる係のホルモンが何種類もいます。ところが下げる係は、インスリンただひとり。この偏った人員配置は設計ミスではなく、食べ物が簡単には手に入らなかった時代を生き延びてきた名残だと考えられています。

下げる担当は、ひとりだけ

厚生労働省のe-ヘルスネットには、血糖値を下げる働きをするホルモンはインスリンだけ、とはっきり書かれています。上げる側はというと、同じ膵臓から出るグルカゴンをはじめ、アドレナリンやコルチゾール、成長ホルモンなど、何人も控えている。

なぜこんな不公平な配置になったのか。血糖が下がりすぎると脳がすぐに悲鳴を上げるので、低血糖への備えは何重にも必要でした。逆に、食べすぎて血糖が上がりすぎるという事態は、人類の歴史のほとんどの期間でめったに起きなかった。だから担当は一人で足りていたわけです。三食きちんと食べられて、コンビニがいつでも開いている暮らしのほうが、体にとってはよほど新しい環境なのだと思うと、少し見方が変わります。

食べたあと、体の中で起きていること

ごはんやパンに含まれる糖質は、消化されてブドウ糖になり、血液に入ります。血糖が上がったのを感知するのは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞。ここからインスリンが出ます。

インスリンが細胞の受容体に結合すると、細胞は血液中のブドウ糖を取り込み、エネルギー源として使い始めるとされています。よく鍵とドアにたとえられるのですが、糖そのものは自力で細胞に入れません。インスリンがドアを開けてやってはじめて中に入れる。血糖値が食後にゆっくり元へ戻っていくのは、この受け渡しが進んでいるからです。

余った分をためるのも、同じホルモンの仕事

使い切れなかったブドウ糖は、インスリンの働きでグリコーゲンや中性脂肪に作り変えられて蓄えられる、とe-ヘルスネットは説明しています。ここだけを取り出して、インスリンは太るホルモンだと語られることがあります。

ただ、これを悪者扱いするのは筋が違う気もします。ためておける能力があったから、収穫のない季節を越えられた。困っているのはホルモンの働きではなく、ためる出番が多すぎる今の環境のほうでしょう。

やっかいなのは、その出番が続くと、インスリンが十分に出ていても効きにくくなる状態が起こりうること。インスリン抵抗性と呼ばれます。鍵はちゃんと差し込まれているのに、ドアが渋くて開かない。そんな状況を想像するとわかりやすいかもしれません。同じ量の食事でも、体の受け取り方は人によって、また時期によって変わります。

食後の眠気は、血糖だけの話ではない

昼食のあとの、あの抗いがたい眠気。血糖の急な上下が原因だと説明されることが多いのですが、そう単純ではないようです。

そもそも眠気は、起きている時間が長いほど強まる睡眠欲求と、体内時計から出る覚醒力、この二つの仕組みで形づくられるとe-ヘルスネットは解説しています。つまり何を食べたかとは別の要因が、もともと働いている。昼食を軽くしても午後に眠くなる人がいるのは、そのためかもしれません。血糖の変動、消化にともなう自律神経の切り替わり、食事の量や中身、前の晩の睡眠。いくつも重なっていると考えるほうが実際に近く、原因を一つに決めきれないというのが正直なところです。諸説あります。

ただし、日中の強い眠気が続く、のどの渇きが妙に強い、体重が減っていく。そうした変化が重なるときは、自己判断せず医療機関に相談してください。

歩くと、筋肉が糖を使う

国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、有酸素運動で筋肉への血流が増えるとブドウ糖が細胞に取り込まれ、インスリンの効果が高まると説明しています。筋力トレーニングで筋肉が増えることでも同じ方向に働くとされ、これをインスリン抵抗性の改善と呼ぶそうです。

面白いのは、その効果が長持ちしないところ。運動をやめると三日ほどで失われていく、と同センターは書いています。週末にまとめて頑張るより、細く長く続けるほうが理にかなっている理由がここにあります。食後に血糖が高くなる方には、食後一〜二時間ごろの運動がよいとも紹介されています。

夕食のあとに洗い物を立ってすませる。ひと駅手前で降りて歩く。その程度のことで十分に「動いた」うちに入ります。血糖を意識するあまり食事を極端に削ったり、話題の食べ方に次々飛びついたりするより、続けられることを一つ選ぶほうが、体にも気持ちにも無理がないはずです。

参考・出典

この記事は、公開されている研究・公的情報をもとに、縁ノート編集部(理学療法士 監修)が作成しています。効果を保証するものではなく、体調の感じ方には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

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