ピカチュウのしっぽは何色? ―― あなたの記憶を揺さぶる「マンデラエフェクト」の話

ピカチュウのしっぽは何色? ―― あなたの記憶を揺さぶる「マンデラエフェクト」の話 雑学

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ピカチュウのしっぽは何色? ―― あなたの記憶を揺さぶる「マンデラエフェクト」の話

ピカチュウのしっぽ、何色ですか?

検索しないでください。

まず、頭の中にピカチュウを思い浮かべてみてください。

黄色い体。赤いほっぺ。耳の先は黒。

では、しっぽはどうでしょう。

あのギザギザした、稲妻のようなしっぽ。先っぽは何色でしたか?

「黄色だけど、先っぽが黒かったような……」

そう思った人。実は、ピカチュウのしっぽの先は黒くありません。しっぽは黄色で、茶色い部分があるのは先端ではなく付け根側です。

「いやいや、黒かったでしょ」

そう思ったなら、今日の主役はピカチュウではありません。あなたの「記憶」です。

「絶対そうだったのに」が、みんな同じ

こうした現象は「マンデラエフェクト」と呼ばれています。

簡単にいうと、「実際とは違うことを、多くの人が同じように記憶している現象」です。

名前の由来は、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領。実際に亡くなったのは2013年ですが、一部の人々が「1980年代に獄中で亡くなったと記憶している」と語ったことから、この名前が広まりました。

普通の物忘れなら、

「ピカチュウのしっぽ?覚えてないな」

となりそうです。ところがマンデラエフェクトのおもしろいところは、「覚えていない」のではなく、「間違ったものを、なぜかハッキリ覚えている」ところにあります。

しかも、自分だけではありません。

では、第2問

「おさるのジョージ」を思い浮かべてください。

黄色い帽子のおじさんと一緒にいる、あのジョージです。

では問題。ジョージのしっぽは、どんな形をしていたでしょう?

細長くクルッとしていた? 下に垂れていた? 木の枝につかまったりしていたような……。

正解は、「しっぽはありません」。ジョージには、最初からしっぽがありません。

「え、サルなのに!?」

と思いますよね。でも、ここに脳のクセが隠れているのかもしれません。

私たちは「サル」というものについて、

  • 木に登る
  • バナナを食べる
  • そして、しっぽがある

そんなイメージを持っています。だからジョージの細かな姿を正確に覚えていなくても、脳が「サルなんだから、しっぽくらいあるだろう」と情報を補ってしまう。

しかも興味深いことに、ピカチュウやおさるのジョージのような視覚的なマンデラエフェクトは、単なるネット上の噂だけではありません。

2022年に発表された研究では、有名なキャラクターやロゴについて、本物と少し改変した画像を使って実験が行われました。すると、ただ適当に間違えるのではなく、多くの人が「同じ間違ったデザイン」を選ぶ現象が確認されました。

つまり、人間の記憶はバラバラに間違えるだけではない。なぜか、みんなで似た方向に間違えることがあるのです。

日本には、もっと不思議な「見た記憶」がある

ここからは少し毛色が変わります。

『天空の城ラピュタ』をテレビで見たことがある人に聞いてみたいことがあります。

ラストシーンのあと、パズーとシータの「その後」が描かれた特別なエンディングを見た記憶はありませんか?

ラピュタから帰還したあと、それぞれの故郷へ戻った様子。そんな通常版には存在しないエンディングを、

「昔、テレビで確かに見た」

と語る人がいます。いわゆる「ラピュタの幻のエンディング」です。

ただし、ここは少し注意が必要です。ピカチュウやジョージとは違い、「ラピュタの幻のエンディング」が科学的な実験によってマンデラエフェクトだと確認されたわけではありません。あくまで日本で長年語られてきた「多くの人が似た記憶を語る」という現象です。

それでも不思議なのは、

「なんとなくそんな気がする」

ではなく、

「テレビで見た」
「こんな場面だった」

と、かなり具体的な記憶として語られることです。

存在しないはずの映像を、なぜ「見た」と感じるのでしょう。

そもそも記憶は「録画」ではない

ここで大事なのが、私たちの記憶の仕組みです。

なんとなく、

目で見る → 脳に保存する → 必要なときに再生する

というイメージを持っていないでしょうか。

でも実際の記憶は、ビデオカメラの録画のようなものではありません。記憶を思い出すとき、脳は残っている情報や知識などを使いながら、出来事を「再構成」します。

つまり、「保存した映像を再生している」というより、「残っている材料から、毎回組み立て直している」に近い。

ここが重要です。

だからピカチュウのしっぽは黒くなる

ピカチュウをもう一度考えてみましょう。

黄色い体。赤いほっぺ。そして、耳の先は黒。一方、しっぽは特徴的なギザギザの形をしています。

細かな記憶が薄れていったとき、

「ピカチュウには黒いアクセントがある」

という記憶と、

「特徴的なしっぽ」

という記憶が混ざって、

「しっぽの先も黒かった」

という、もっともらしい姿が頭の中で作られている可能性があります。

ただし、「なぜピカチュウではこの間違いが起こるのか」という原因が完全に解明されたわけではありません。ここがおもしろいところです。

「存在しない記憶」は実験でも作れる

心理学には「DRM課題」と呼ばれる有名な実験があります。

たとえば、

  • ベッド
  • 眠い
  • 休む

といった、睡眠を連想させる言葉を次々に見せます。そのあと、

「さっき見た言葉は?」

と尋ねます。すると実際には提示されていない「睡眠」という言葉まで、「見た」と答える人が現れます。

周りの情報から意味を読み取り、存在しなかった情報まで記憶の中に入り込んでしまうのです。

しかも本人からすれば、嘘をついているわけではありません。本当に「見た気がする」。

これが記憶のおもしろさであり、少し怖いところでもあります。

「絶対に覚えている」は、証拠にならない

マンデラエフェクトを調べると、

  • 「過去が書き換えられた」
  • 「別の世界線から移動してきた」
  • 「パラレルワールドの証拠だ」

なんて話も出てきます。ピカチュウのしっぽが黒い世界から、黄色い世界へ移動してきた。そう考えると、ちょっとワクワクします。

ただ、現在のところマンデラエフェクトがパラレルワールドによって起きているという科学的な証拠はありません。むしろ科学的におもしろいのは、もっと身近なところです。

人間の脳は、見たものを忘れるだけではなく、なかったものを補い、それを「自分の記憶」として確信してしまうことがある。

ピカチュウなら笑って終われます。でも日常生活ではどうでしょう。

「あの人、絶対こう言ったよ」
「いや、そんなこと言ってない」
「いやいや、俺はハッキリ覚えてる」

こんな経験、ありませんか?

もしかすると二人のうちどちらかが嘘をついているのではなく、二人とも自分の記憶を本気で信じているのかもしれません。

「ハッキリ覚えている」という感覚と、「実際にそうだった」という事実は、必ずしも同じではないのです。

最後に、もう一度

この記事を読む前に思い浮かべたピカチュウ。そのしっぽの先は、何色でしたか?

もし黒かったなら、その黒色はどこから来たのでしょう。誰かに教えられたのか。どこかで似た絵を見たのか。それとも、自分の脳が作ったのか。

マンデラエフェクトの一番おもしろいところは、「記憶力が悪いね」で終わる話ではありません。自分が今まで疑いもしなかった「記憶」というものが、実は思っている以上に曖昧で、簡単に作り変わってしまう。そのことに気づかせてくれるところにあります。

さて。

あなたが「絶対に覚えている」と思っている昔の記憶。本当に、その通りだったでしょうか。


✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site

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