「21日で習慣になる」は誤解だった?

「21日で習慣になる」は誤解だった?科学が教える“続く人”の作り方 心・生き方

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「21日で習慣になる」は誤解だった?科学が教える“続く人”の作り方

「運動を習慣にしよう!」

そう決意して、新しいランニングシューズまで買った。

1日目。やる気満々。
3日目。まだ楽しい。
7日目。今日はちょっと面倒くさい。
10日目。「雨だし、明日でいいか」

そして気づけば、玄関には新品同様のランニングシューズ。

こんな経験、ありませんか?

新しいことを始めるときによく聞くのが、「21日続ければ習慣になる」という話です。つまり3週間だけ頑張れば、そのあとは歯磨きのように自然と続けられる……。本当なら、とても魅力的な話です。

ところが、習慣についての研究を見てみると、「21日で習慣になる」という科学的なルールはありません。では、人間が新しい行動を「当たり前」にできるまで、本当はどれくらいかかるのでしょうか?

そもそも「習慣になる」とは?

習慣というと、「毎日続けていること」と思うかもしれません。

でも習慣研究では、単に何日間続けたかだけではなく、「その行動がどれくらい自動的に起こるようになったか」が重要になります。

たとえば歯磨き。毎朝、「よし。今日も健康のために歯を磨くぞ!」と強い意志を振り絞っている人は、あまりいないでしょう。

朝起きる。洗面所へ行く。歯ブラシを手に取る。かなり自然に行っています。

このように、特定の状況をきっかけとして、あまり考えなくても行動が起こるようになる。これが習慣化の重要な特徴です。

「21日で習慣になる」はどこから来た?

「21日」という数字は非常に有名ですが、もともとは現代の習慣形成研究から導き出された数字ではありません。

その起源としてよく挙げられるのが、形成外科医Maxwell Maltzが1960年に出版した『Psycho-Cybernetics』です。Maltzは、手術後の患者などを観察する中で、新しい身体の状態などに心理的に適応するまで少なくとも約21日かかることがあると記述しました。

ところが、この「少なくとも約21日」という話が広まる過程で、「人間は21日で新しい習慣を作れる」というシンプルなルールのように扱われるようになったと考えられています。

つまり、21日=習慣完成の日という科学的な法則が発見されたわけではありません。

では、本当は何日かかる?

習慣形成研究で有名なのが、University College LondonのPhillippa Lallyらが行った研究です。

参加者は、

  • 「昼食と一緒に水を飲む」
  • 「夕食前に15分走る」

など、自分で選んだ行動を毎日繰り返しました。研究者は、その行動がどれくらい「自動的」になっていくのかを追跡しました。

その結果、習慣の自動性が十分高いレベルに達するまでの日数の中央値は、約66日。

ただし、ここが重要です。全員が66日だったわけではありません。人によって大きく異なり、およそ18日から254日まで幅がありました。

つまり、「66日頑張れば必ず習慣になる」という意味でもありません。習慣に魔法の日数はないのです。

さらに新しい研究ではどうなっている?

2024年には、健康行動の習慣形成について過去の研究をまとめたシステマティックレビューとメタ解析が発表されています。

対象になったのは、

  • 運動
  • 食事
  • 水分摂取
  • デンタルフロス
  • 座っている時間を減らす

などの健康行動です。

習慣形成までの期間を報告した研究を見ると、

  • 59日程度
  • 66日程度
  • 91日程度
  • 106〜154日程度

など、かなり幅がありました。ある研究では4〜335日という非常に大きな個人差も報告されています。

つまり現在の研究から言えるのは、「21日では短すぎることが多く、習慣形成には数か月かかることも珍しくない」ということです。

大切なのは、「何日で完成するか」ではなく、「行動を繰り返すうちに少しずつ自動化していく」という考え方です。

ここで朗報。「1日サボったら全部やり直し」ではない

習慣化しようとしていると、「毎日絶対にやらなきゃ」と思いがちです。そして一度できなかっただけで、「あぁ……途切れちゃった」とやる気を失ってしまいます。

でも、Lallyらの研究では、1回実行できなかったことが習慣形成のプロセスを大きく壊すわけではありませんでした。これはかなり大事なポイントです。

習慣化は、○○○○○○○○○○という完璧な連続記録を作るゲームではありません。○○○○×○○○○○でもいい。

一日できなかったことより、「その次に戻ってくること」の方が重要なのです。

では、どうすれば習慣になりやすい?

ここからが実践編です。研究から考えられるポイントを、日常生活に落とし込んでみましょう。

コツ①「頑張る」ではなく「いつやるか」を決める

「今年は運動する」

これは目標としては悪くありません。でも、行動としては曖昧です。

月曜日なのか。朝なのか。仕事のあとなのか。どこでやるのか。何も決まっていません。

そこで有効なのが、「もし○○したら、△△する」という形で決める方法です。これは心理学で「Implementation Intention(実行意図)」と呼ばれます。

たとえば、

  • 「運動する」ではなく、「仕事から帰って着替えたら、10分歩く」
  • 「読書する」ではなく、「夜、歯を磨いたら本を2ページ読む」

という具合です。

運動を対象にした研究のシステマティックレビューでも、いつ・どこで行動するかを具体的に計画する実行意図は、一定の条件下で身体活動を促す有用な行動変容手法とされています。

「やる気が出たらやる」から、「この状況になったらやる」へ変える。これがポイントです。

コツ② 最初から大きな目標を作らない

「毎日5km走る!」「毎日筋トレ1時間!」「毎日本を30ページ読む!」

初日はできます。問題は、疲れて帰ってきた水曜日の夜です。

習慣化の初期では、行動を繰り返すこと自体が重要です。そこで最初は、

  • 10分歩く
  • スクワット5回
  • 本を1ページ読む
  • 机に座って5分勉強する

くらいでも構いません。少し物足りないくらいから始める。

習慣化では、「今日どれだけ頑張ったか」より、「明日も同じ行動を起こしやすいか」という視点が大切です。

コツ③ 同じ状況で繰り返す

習慣は、行動だけではなく、「きっかけ」とセットで形成されていきます。

たとえば、

  • 朝起きたら → 水を飲む
  • 昼食を食べたら → 薬を飲む
  • 仕事から帰ったら → ウォーキングする
  • 歯を磨いたら → ストレッチする

という具合です。

毎回バラバラの時間・場所で頑張るより、「この状況になったら、この行動」という関係を作っていく。すると、その状況自体が行動のスイッチになっていきます。

コツ④ 「目に入る環境」を作る

人間の行動は、意志だけで決まっているわけではありません。環境から大きな影響を受けます。

たとえば、

  • 運動したいなら、前日の夜にウェアを出しておく。
  • 水を飲みたいなら、机に水筒を置いておく。
  • 本を読みたいなら、スマートフォンではなく本を枕元に置いておく。
  • お菓子を減らしたいなら、目につく場所に置かない。

こうすると、「思い出して頑張る」ために必要なハードルを下げられます。

デジタル技術を使った習慣形成研究のレビューでも、目標設定、自己モニタリング、プロンプトやキュー(行動を促すきっかけ)などが広く利用されています。

コツ⑤ 記録する

カレンダーに○をつける。歩数を記録する。運動した日にチェックを入れる。こうした方法も使えます。

ポイントは、記録そのものを目的にしないこと。

「連続記録が途切れたから全部終わり」ではなく、「最近できているかな?」を確認するために使います。

記録は自分を責める採点表ではなく、自分の行動を見えるようにする道具です。

コツ⑥ 「やる気」を信用しすぎない

新しいことを始めた日は、やる気があります。新しいウェア。新しいノート。新しいアプリ。それだけで少し楽しい。

でも、その気持ちは毎日同じではありません。仕事で疲れた日もあれば、雨の日もあり、眠い日もあります。

だから、「モチベーションを維持する」だけに頼るのではなく、

  • 時間を決める
  • 場所を決める
  • きっかけを決める
  • 始めるまでの手間を減らす

という仕組みを作る方が現実的です。

習慣とは、「毎日やる気を出せるようになること」ではなく、「やる気を毎回出さなくても行動しやすくなること」とも考えられます。

「三日坊主」は意志が弱い証拠ではない

新しいことを始めて続かなかったとき、「自分は意志が弱い」と思う人がいます。

でも、そもそも新しい行動が自動化するまでには時間がかかります。数週間頑張っただけで、「まだ面倒くさい」と感じるのは不思議ではありません。

21日続けても、「全然習慣にならない……」と落ち込む必要はありません。研究を考えれば、むしろ普通です。

21日目は「ゴール」ではなく「途中」

もし今日から新しいことを始めるなら、「21日間、絶対に続ける」ではなく、「続けやすい仕組みを作ってみる」くらいから始めてみてください。

そして1日できなかったとしても、次の日にまた戻ればいい。

習慣は、ある朝突然完成するものではありません。

昨日より少し考えずにできる。以前より始めるのが面倒ではない。気づいたら自然とやっている。

そんな小さな変化が積み重なって、少しずつ「いつもの自分」になっていきます。

まとめ

「21日続ければ習慣になる」という有名な話に、万人に当てはまる科学的根拠はありません。

研究では習慣形成までの日数には非常に大きな個人差があり、中央値約66日という有名な報告もあれば、2024年のシステマティックレビューでは4〜335日という幅も確認されています。

だから、21日で習慣にならなくても失敗ではありません。大切なのは、

  • 具体的な「きっかけ」と行動をセットにする
  • 最初のハードルを小さくする
  • なるべく同じ状況で繰り返す
  • 行動しやすい環境を作る
  • 記録をうまく使う
  • 一度できなくても、次から戻る

ということ。

習慣を作るのに必要なのは、「強い意志を持った特別な人になること」ではなく、「普通の自分でも続けやすい仕組みを作ること」なのかもしれません。


【主な参考文献】

  • Singh B, Murphy A, Maher C, Smith AE. Time to Form a Habit: A Systematic Review and Meta-Analysis of Health Behaviour Habit Formation and Its Determinants. Healthcare. 2024;12(23):2488.
  • Lally P, van Jaarsveld CHM, Potts HWW, Wardle J. How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology. 2010;40(6):998–1009.
  • Kompf J. Implementation Intentions for Exercise and Physical Activity: Who Do They Work For? A Systematic Review. Journal of Physical Activity and Health. 2020;17(3):349–359.
  • Adriaanse MA, Vinkers CDW, De Ridder DTD, Hox JJ, De Wit JBF. Do implementation intentions help to eat a healthy diet? A systematic review and meta-analysis of the empirical evidence. Appetite. 2011;56(1):183–193.

※本記事は習慣形成に関する研究を一般向けに紹介したものです。習慣形成に必要な期間には大きな個人差があり、「66日」などの数字もすべての人・すべての行動に当てはまるものではありません。


✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site

画像: “Running Shoes” by Josiah Mackenzie is licensed under CC BY 2.0. To view a copy of this license, visit https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/.(Openverse)

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