📂 健康・からだ
「歳をとると筋肉痛が2日後にくる」は本当?筋肉痛と年齢の意外な関係
久しぶりに運動した翌朝。
「あれ? 意外と平気だな」
ところが、その次の日。
階段を降りようとした瞬間、
「痛っ……!」
太ももがバキバキ。
そんなとき、誰かが決まって言います。
「歳とると筋肉痛が遅れてくるんだよ」
なんとなく納得してしまうこの言葉。
でも、本当に筋肉痛が遅れてくるのは「歳のせい」なのでしょうか?
実は科学的に見ると、話はそれほど単純ではありません。
そもそも、なぜ筋肉痛は翌日にくるの?
運動した直後ではなく、しばらく時間が経ってから現れる筋肉痛を「遅発性筋肉痛(Delayed Onset Muscle Soreness:DOMS)」と呼びます。
特に起こりやすいのが、
- 久しぶりの筋トレ
- 普段やらない運動
- 山を下る
- 階段をたくさん降りる
- 重い物をゆっくり下ろす
といった運動です。
ポイントになるのが「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」。
これは筋肉が力を出しながら引き伸ばされる動きです。
たとえばスクワットなら、しゃがんでいくときの太ももの筋肉。
登山なら、下山するときに身体が落ちないようブレーキをかける太ももの筋肉。
こうした普段慣れていない負荷のあとに、DOMSは起こりやすくなります。
筋肉痛は「乳酸がたまったから」ではない
ここで昔からある有名な説があります。
「乳酸がたまるから筋肉痛になる」
現在では、遅発性筋肉痛をこれだけで説明することはできません。
運動による機械的ストレスをきっかけとして筋組織に微細な変化が生じ、その後の炎症反応や痛みに関係するさまざまな生理学的変化を経て、痛みとして感じられると考えられています。
つまり、
運動 → 筋肉に慣れない負荷が加わる → 組織や身体の中でさまざまな反応が起こる → 時間が経ってから痛みを感じる
という流れです。
だから運動が終わった瞬間ではなく、少し時間が経ってから痛くなるのです。
では、筋肉痛は何時間後にくる?
American College of Sports Medicine(ACSM)は、DOMSについて、
運動後12〜24時間ほどで現れ始め、24〜72時間で痛みが強くなることがある
と説明しています。
つまり、
「昨日運動したけど痛くない!」
と思っていても、まだ筋肉痛が本気を出していない可能性があります。
翌朝は平気だったのに、その日の夜や翌々日に痛くなる。
これはDOMSとして特に不思議な現象ではありません。
【出典】
American College of Sports Medicine. Delayed Onset Muscle Soreness (DOMS).
ここで本題。「歳をとると筋肉痛が遅くなる」は本当?
結論から言うと、
「筋肉痛が2日後に来た=歳をとった証拠」
とは言えません。
そもそもDOMS自体が、年齢に関係なく24〜72時間程度で強くなることがある現象だからです。
20歳でも2日後に痛くなることはあります。
50歳でも翌日に痛くなることはあります。
では、「歳をとるほど筋肉痛が遅れる」という明確な科学的根拠があるのか?
現時点では、それを単純な法則として支持する強い根拠はありません。
むしろ2025年の研究では……
ここが面白いところです。
2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、若年者と高齢者の「運動誘発性筋損傷」が比較されています。
研究者たちは1,092件の文献候補から条件に合う36研究を解析し、
- 筋力などの筋機能
- 筋肉痛
- クレアチンキナーゼ(CK)
などを比較しました。
その結果、加齢そのものが運動後の筋損傷をより大きくする、という単純な関係は支持されませんでした。
つまり、
「歳をとったから筋肉痛がひどくなる」
「歳をとったから必ず遅くなる」
と一括りにすることはできないのです。
【出典】
Advancing Age Is Not Associated With Greater Exercise-Induced Muscle Damage: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression. Journal of Aging and Physical Activity, 2025.
じゃあ、なぜ「若い頃より遅くなった」と感じるの?
ここからが大事です。
年齢そのものより、
「普段その運動をどれくらいやっているか」
の影響を考える必要があります。
たとえば20歳の頃、
- 毎日部活をしていた
- 毎週スポーツをしていた
- よく歩いていた
- 筋トレをしていた
という人が、40歳になって久しぶりに運動したとします。
20歳の自分と40歳の自分では、「年齢」だけではなく運動習慣そのものが違います。
そこへ突然、
- 草野球
- 登山
- 子どもの運動会
- 久しぶりの筋トレ
などが入ってくる。
筋肉からすると、
「聞いてないんですけど」
という状態です。
するとDOMSが起こりやすくなります。
「昔より筋肉痛が遅くなった」
という体感の中には、年齢だけでなく、
- 運動習慣
- トレーニング経験
- 運動強度
- 行った運動の種類
- 普段使っていない筋肉への負荷
など、多くの条件が混ざっている可能性があります。
同じ運動をすると、次は筋肉痛が軽くなることがある
人間の身体には面白い性質があります。
一度慣れない運動をすると、同じような運動を次に行ったとき、筋肉痛や筋損傷の指標が小さくなることがあります。
これは「Repeated Bout Effect(反復効果)」として知られています。
つまり身体は、
「前にもこれ、やりましたね」
と適応していくのです。
実際、同じエキセントリック運動を繰り返した研究でも、2回目では筋肉痛などが軽減する現象が確認されています。
だから筋肉痛の出方を見るときは、
「何歳か」
だけでなく、
「その運動に慣れているか」
を見ることがとても重要なのです。
「筋肉痛が強い=筋肉がめちゃくちゃ成長している」でもない
もう一つ、よくある勘違いがあります。
翌日、
「歩けないくらい筋肉痛!昨日の筋トレめちゃくちゃ効いた!」
となることがあります。
気持ちは分かります。
でも、
筋肉痛の強さ=筋肉の損傷の大きさ
とも限りません。
実際にDOMSと筋損傷の指標を比較した研究では、筋肉痛の程度が筋損傷の大きさをそのまま反映するわけではないことが報告されています。
つまり、
「筋肉痛が強かったから最高のトレーニングだった」
とも、
「筋肉痛がなかったからトレーニングが無駄だった」
とも言えません。
筋肉痛はトレーニングの「成績表」ではないのです。
では、筋肉痛になったらどうする?
一般的なDOMSであれば、多くの場合は時間とともに改善していきます。
無理に強い運動を重ねる必要はありません。
日常生活の範囲で身体を動かしながら、痛みが強ければ運動強度を落とすなど、回復に合わせて調整するとよいでしょう。
そして次回からは、いきなり以前と同じ運動量に戻すのではなく、少しずつ身体を慣らしていくことが大切です。
「昔これくらいできたから」
は、久しぶりの運動では少々危険な合言葉です。
身体は昔の運動歴を履歴書のように提出してくれません。
まとめ
「歳をとると筋肉痛が2日後に来る」
よく聞く話ですが、現在の研究からは、
「筋肉痛が遅れてきた=老化」
とは言えません。
そもそも遅発性筋肉痛(DOMS)は、運動後12〜24時間ほどで現れ始め、24〜72時間程度で強くなることがある現象です。
そして筋肉痛の出方には、
- 運動の種類
- 負荷の強さ
- その運動への慣れ
- 普段の活動量
- トレーニング歴
など、さまざまな要因が関係します。
だから久しぶりの運動から2日後、階段を降りながら、
「ついに俺も歳か……」
と落ち込む必要はありません。
あなたが歳をとった証拠ではなく、
単純に「筋肉痛が予定通りやってきただけ」
かもしれません。
主な参考文献・情報源
- American College of Sports Medicine. Delayed Onset Muscle Soreness (DOMS).
- Advancing Age Is Not Associated With Greater Exercise-Induced Muscle Damage: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Meta-Regression. Journal of Aging and Physical Activity. 2025.
- Nosaka K, Newton M, Sacco P. Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2002;12(6):337-346.
- Nosaka K, et al. The effects of a repeated bout of eccentric exercise on indices of muscle damage and delayed onset muscle soreness. Journal of Science and Medicine in Sport. 2000.
- Cheung K, Hume P, Maxwell L. Delayed onset muscle soreness: treatment strategies and performance factors. Sports Medicine. 2003.
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものです。運動後の痛みが非常に強い、著しい腫れや筋力低下がある、尿の色が異常に濃い、痛みが長期間改善しないなどの場合は、通常の筋肉痛ではない可能性もあるため医療機関へご相談ください。
✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site)


