見つめ合うだけで増える、犬と人の不思議なホルモン

見つめ合うだけで増える、犬と人の不思議なホルモン 健康・からだ

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見つめ合うだけで増える、犬と人の不思議なホルモン

犬と暮らしたことのある人なら、足元からじっと見上げられて、理由もなく胸のあたりがゆるんだ経験があるはずです。あれは気のせいではないかもしれない、という研究があります。見つめ合ったあと、犬と飼い主の両方で同じホルモンが増えていた。その名前がオキシトシンです。

もとは出産と授乳のホルモンだった

オキシトシンは、アミノ酸が9個つながっただけの小さなペプチドホルモンです。脳の視床下部でつくられ、下垂体後葉から血液中へ送り出されます。

教科書に長く載ってきた役割は二つ。お産のときに子宮を収縮させることと、授乳のときに母乳を押し出すことです。産科の現場では昔からおなじみの名前で、いわば出産と子育てのためのホルモンという顔で知られてきました。

ところが視床下部でつくられたオキシトシンは、血液に出ていくだけでなく、脳の中のあちこちにも届いています。母性行動やストレス反応、社会性のある行動にも関わるとされ、近年は鎮痛や抗炎症、ストレスをやわらげる作用の可能性も指摘されています。人との関わりや信頼にも関係しているらしい、という話が出てきたのはこの流れの中です。

犬と飼い主が見つめ合うと、双方で上がった

ここが「へえ」と言いたくなるところ。麻布大学の永澤美保さん、菊水健史さんらの研究チームは、家庭で飼われている犬と飼い主30組に30分間ふつうに過ごしてもらい、その前後で尿中のオキシトシン濃度を測りました。2015年に Science 誌に発表された研究です。

犬が飼い主をよく見つめたペアでは、犬にも飼い主にも濃度の上昇がみられたと報告されています。別の実験では、犬にオキシトシンを経鼻投与するとメス犬が飼い主を見つめる時間が増え、それにつられるように飼い主側の濃度も上がりました。見つめる、ホルモンが上がる、もっと見つめたくなる。そんな輪が回っているように見える、という結果です。

同じことをオオカミで試すと、人の顔にほとんど視線を向けず、両者の濃度も動かなかったとされています。犬と人が長い時間をかけて一緒に暮らすなかで育ってきた関係なのかもしれません。ペットに限らず、赤ちゃんと親、親しい人同士の視線にも、似た仕組みが働いている可能性が考えられています。

ただ、増やせば幸せになるわけではない

愛情ホルモンという呼び名が広まったせいで、多ければ多いほどいい、という話になりがちです。ここは正直に書いておきたいところ。

De Dreu らが2011年に PNAS に報告した研究では、オキシトシンには自分の属する集団への好意を強める働きがある一方で、その外側にいる相手に対しては同じようには働かなかったとされています。論文のタイトルは「オキシトシンはヒトの自民族中心主義を助長する」。つまり、文脈しだいで現れ方が変わるということです。

万能の幸せ薬ではありません。誰と、どんな関係の中にいるか。その状況ごとに顔つきの違うホルモンだと考えたほうが、実態に近いようです。サプリや特定の食品で手軽に増やせば不調が消える、といった言い方も見かけますが、そこまで確かめられた話ではありません。

特別なことは、たぶんいらない

日常でできることは、実はもう知っていることばかりです。

  • 手をつなぐ
  • 肩をぽんと叩く
  • 犬や猫の背中をなでる
  • 「ありがとう」「お疲れさま」と声に出す
  • 相手の目を見て、うなずきながら話を聞く

どれも道具がいらず、お金もかかりません。人と会う機会が少ない時期でも、動物や、電話越しの声のやりとりが同じ役目を果たしてくれることもあります。ただ、効果を測るためにやることではないので、義務にしなくていいと思います。毎日欠かさず、と決めたとたんに息苦しくなるくらいなら、やらないほうがましです。今日たまたま誰かと目が合って、少し肩の力が抜けた。それくらいで十分ではないでしょうか。

一方で、気分の落ち込みや不眠、体調の変化が長く続いているなら、ホルモンの話に当てはめて考える前に、医療機関で相談してみてください。原因が別のところにあることも珍しくありません。

参考・出典

この記事は、公開されている研究・公的情報をもとに、縁ノート編集部(理学療法士 監修)が作成しています。効果を保証するものではなく、体調の感じ方には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

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