📂 健康・からだ
「寝る子は育つ」の続き、大人の成長ホルモン
子どもの頃、「早く寝ないと大きくなれないよ」と言われた記憶はありませんか。あの言い伝え、実はかなり的を射ていました。ただし本当のポイントは、寝ている時間の長さよりも、眠り始めの深さのほうにあります。
眠りに落ちた直後、どっと出る
成長ホルモンは、脳の下垂体という小さな器官でつくられ、血液の中に送り出されます。日本内分泌学会の説明では、骨が長くなること、つまり身長が伸びることに最も重要なホルモンとされています。
おもしろいのは出方です。一日じゅう同じ量が流れているのではなく、まとまって出る山があります。その大きな山のひとつが、眠りに落ちた直後。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、入眠直後の徐波睡眠、いわゆるノンレム睡眠のいちばん深い時間帯に一致して成長ホルモンの分泌がみられる、と説明されています。
だとすると「寝る子は育つ」は、ただ長く寝れば伸びるという意味ではなさそうです。眠り始めの深い時間をきちんと確保できているか。そちらのほうが本題に近い。夜中に何度も目が覚めたり、寝る直前まで画面を見ていて寝つきが浅かったりすると、いちばんおいしいところを取り逃がしているのかもしれません。
背が伸びなくなっても、仕事は終わらない
名前のせいで、子ども専用のホルモンだと思われがちです。実際には、身長の伸びが止まったあとも分泌は続きます。
それがよく分かるのが、大人になってから成長ホルモンが足りなくなる病気の姿です。日本内分泌学会は成人成長ホルモン分泌不全症について、体脂肪とくに内臓脂肪が増え、筋肉量や骨塩量が減り、疲れやすさやスタミナの低下、気力の低下といった変化が現れると説明しています。身体所見として、皮膚の乾燥や菲薄化、つまり皮膚が薄くなることも挙げられています。肌との関わりが語られる背景には、こうした事実があります。
ここは誤解されやすいので正直に書きます。足りない状態で不調が出ることと、たくさん出せば若返ることは、まったく別の話です。
年齢とともに減る。ただしゼロにはならない
分泌量は思春期あたりで山を迎え、その後は年齢とともにゆるやかに減っていくと一般に言われます。減り方には個人差もあります。それでも一生出続けるホルモンで、体の材料をつくったり壊したりする調整に関わり続けます。
運動のあとに分泌が高まる、という話もよく耳にします。方向としてはそうした報告がありますが、参加者が数人規模の小さな研究も多く、どんな運動をどれだけやれば十分なのかという答えは、今のところはっきりしていません。「これをやれば必ず増える」と言い切る情報からは、少し距離を置いたほうがよさそうです。
増やそうとするより、邪魔をしない
日本小児内分泌学会は子どもの成長について、大切なのは適度な運動、バランスのとれた食事、しっかりした睡眠であり、それらが一番役立つと述べています。拍子抜けするくらい普通ですね。ただ、専門の学会がわざわざこう書いていること自体に意味があると思います。
日常でできることといえば、次のようなことです。
- 就寝時刻を大きくばらつかせない
- 寝る前のカフェインやアルコールを控えめにする
- 寝室を暗く静かにしておく
成長ホルモンのため、というより、眠り始めをちゃんと深くするための工夫です。全部やる必要はありません。ひとつ選ぶなら、寝る時刻をそろえるところからでしょうか。
注射やサプリを試す前に
成長ホルモンは薬としても使われますが、それは分泌不全と診断された人に対する治療です。日本小児内分泌学会は、抗加齢効果や運動能力の向上を期待した誤った使用例が報告されているとしたうえで、分泌不全のない成人への成長ホルモン治療について、安全性や有用性の十分な科学的根拠は示されていないとはっきり述べています。投与量が多すぎると、筋肉痛やむくみ、血圧上昇、耐糖能障害などの副作用が現れる可能性があるとも書かれています。
サプリメントについても同学会は、成長ホルモンの分泌が促進されたという科学的データが信頼できる学術雑誌に報告されたことはない、としています。鼻や口にスプレーするタイプについても、粘膜からはほとんど吸収されないと指摘されています。
疲れやすさや体の変化が気になってこの話にたどり着いた方もいるかもしれません。その場合は市販のものを試す前に、一度医師に相談してみてください。原因がほかにあることも珍しくありません。
今夜できることは、たぶんひとつだけです。少し早めに部屋を暗くする。眠り始めの深いところは、それだけで勝手に仕事を始めてくれます。
参考・出典
- ノンレム睡眠|e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 成人成長ホルモン(GH)分泌不全症|一般の皆様へ|日本内分泌学会
- 成長ホルモンの適正使用に関する見解|日本小児内分泌学会
- 「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解|日本小児内分泌学会
この記事は、公開されている研究・公的情報をもとに、縁ノート編集部(理学療法士 監修)が作成しています。効果を保証するものではなく、体調の感じ方には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
画像: “deep deep sleep redux” by tempophage is licensed under CC BY 2.0. To view a copy of this license, visit https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/.(Openverse)


