100歳でも筋肉は育つ

100歳でも筋肉は育つ ― 年齢に「筋トレの定年」はない 健康・からだ

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100歳でも筋肉は育つ ― 年齢に「筋トレの定年」はない

「もう歳だから、筋トレしても意味がないよ」

そんな言葉を聞いたことはありませんか?

確かに、年齢を重ねるにつれて筋肉量や筋力は低下しやすくなります。だからといって、「高齢になったら筋肉はもう増えない」というわけではありません。

実は30年以上前から、90歳を超えた高齢者でも筋力トレーニングによって筋肉が大きくなり、筋力まで大幅に向上することが研究で確認されています。そして近年では、ついに100歳以上の人を対象とした筋力トレーニングの研究まで報告されています。

今回は、「人間は何歳まで筋肉を鍛えられるのか?」という、ちょっとワクワクする話です。

そもそも、なぜ歳をとると筋肉が減るの?

年齢を重ねると、私たちの身体では少しずつ筋肉量や筋力が低下していきます。加齢に伴って筋肉量や筋力、身体機能が低下した状態は「サルコペニア」と呼ばれます。

ただし、ここで大切なのは、「年齢だけが原因ではない」ということです。

高齢になるにつれて、

  • 外出する機会が減る
  • 歩く距離が短くなる
  • 階段を使わなくなる
  • 重いものを持たなくなる
  • 病気や入院などで動かない期間が増える

といった生活の変化も重なります。

つまり、「歳をとったから動けなくなる」だけではなく、「動かなくなることで、さらに筋肉が衰える」という悪循環も起こります。

では反対に、90歳になってから筋肉にしっかり刺激を与えたらどうなるのでしょうか?

平均90歳の人たちに筋トレをしてもらった有名な研究

この疑問に真正面から挑んだ有名な研究があります。

1990年、医学雑誌「JAMA」にFiataroneらが発表した研究です。

研究に参加したのは、施設で生活していた非常に高齢の男女10人。平均年齢は約90歳。しかも、最高齢は96歳でした。参加者は8週間にわたり、脚を中心とした高強度の筋力トレーニングを行いました。

「90歳の人に高強度の筋トレ?」と少し心配になるかもしれません。しかし結果は驚くべきものでした。

8週間後、筋力は約174%アップ

トレーニングを完遂した9人では、筋力が平均で約174%向上しました。

さらに驚くのは、「筋力が出せるようになっただけ」ではなかったことです。

CTなどで評価した大腿部の筋肉の面積は、約9%増加。つまり、90歳前後の人でも実際に筋肉そのものが大きくなったのです。

さらに歩行能力にも変化がみられ、タンデム歩行の速度は平均48%改善しました。

研究者たちは、高齢で身体機能が低下した人であっても、高負荷の筋力トレーニングによって筋力、筋肉量、移動能力を改善できることを示しました。

「もう90歳だから筋肉は増えない」という考えを覆す研究結果でした。

これは一つの研究だけの話ではない

もちろん、10人程度の研究だけで「高齢者は絶対に筋肉が増える」と結論づけることはできません。しかし、その後も多くの研究が行われています。

2020年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、75歳以上の非常に高齢な人を対象とした22件の研究が検討されました。その結果、筋力トレーニングによって筋力が有意に改善することが確認されています。さらに80歳以上に限定した解析でも、筋力トレーニングの効果が認められました。

つまり、「90歳の人が筋トレで強くなった」というのは珍しい一例ではなく、高齢者でも筋力トレーニングに適応できることは、その後の研究でも支持されているのです。

そしてついに「100歳以上」の研究も

さらに興味深い研究が近年報告されました。対象となったのは、100歳以上の高齢者です。

研究には19人のセンテナリアン(100歳以上の人)が参加し、最終的に12人が研究を完遂しました。

トレーニングを行うグループでは、

  • 週2回、12週間
  • 8種類の運動を実施
  • 負荷は推定最大筋力の50〜70%程度

つまり、「100歳だからほとんど負荷をかけない」という内容ではありません。その人の能力に合わせて、きちんと筋肉に負荷を与えるプログラムでした。

100歳を超えても身体は変わった

12週間後、トレーニングを行った100歳以上の人たちは身体機能を評価するSPPBというテストで、

  • 平均2.3点 → 5.0点

へ改善しました。歩行や立ち上がりなどを含む別の身体機能評価でも、

  • 3.8点 → 6.5点

へ改善。さらにフレイル(虚弱)の程度についても改善が確認されています。

この研究は筋肉の大きさそのものを主要な評価項目として調べた研究ではないため、「100歳でも筋肥大することが証明された」とまでは言えません。

しかし、「100歳を超えた身体でも、適切な筋力トレーニングに反応し、身体機能を改善できる」ことを示した非常に興味深い研究です。

筋肉に「定年」はない

ここまでの研究を見ると、とても面白いことが分かります。

人間の身体は、「○歳になったら筋肉を作る能力がゼロになる」という仕組みにはなっていません。

もちろん、若い人と高齢者では同じ条件ではありません。加齢によって筋肉を作る反応が弱くなったり、回復に時間が必要になったり、病気や関節の問題などによって運動方法を調整する必要もあります。

それでも、「年齢を重ねても身体には適応する力が残っている」という事実は、とても大切です。

90歳でも。そして100歳を超えても。身体に適切な刺激を与えることには意味があります。

「筋トレ=ムキムキになるため」ではない

筋トレという言葉を聞くと、ダンベル、バーベル、ボディビルダー。そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。

しかし高齢者にとって筋力トレーニングの目的は、必ずしも大きな筋肉を作ることではありません。

たとえば、

  • 椅子から自分で立ち上がる
  • トイレまで自分で歩く
  • 買い物に出かける
  • 階段を上る
  • 旅行に行く
  • 孫やひ孫と出かける

こうした日常生活の一つひとつに筋力は関わっています。

若い人にとっての「あと10kg持ち上げられるようになった」と、高齢者にとっての「一人で椅子から立てるようになった」は、数字以上に大きな意味の違いがあります。

何歳から始めればいい?

答えはシンプルです。「今から」です。

40歳だから遅い。60歳だから遅い。80歳だから遅い。そう考える必要はありません。

90歳を超えた人たちでも、わずか8週間のトレーニングによって筋肉の大きさと筋力が改善した研究があります。100歳以上でも、12週間のトレーニングによって身体機能の改善が確認されています。

もちろん、高齢者や持病のある方が、いきなり重いバーベルを持ち上げる必要はありません。大切なのは「いきなり頑張りすぎないこと」です。

まずは椅子からの立ち座り、かかと上げ、軽い重りやゴムバンドを使った運動など、今の自分が無理なくできることから始めてみましょう。体調や関節の状態を見ながら、少しずつ負荷や回数を増やしていくことが安全で、長く続けるためのポイントです。

特に持病がある方、転倒リスクが高い方、痛みがある方などは、医師や理学療法士などの専門家と相談しながら行うことが大切です。

「できることから、ゆっくりと」

それだけで十分、身体は少しずつ応えてくれます。

今日が、これからの人生で一番若い日

筋肉は、若者だけのものではありません。

30年以上前の研究では、90歳を超えても筋肉が大きくなりました。その後の研究でも、80歳以上の高齢者に筋力トレーニングの効果が確認されています。そして現在では、100歳を超えた人でも筋力トレーニングによって身体機能を改善できることが報告されています。

年齢を重ねることを止めることはできません。でも、「歳をとったから、もう身体は変わらない」と決めつける必要もありません。

90歳でも身体は変わる。100歳を超えても身体は刺激に応えてくれる。

そう考えると、筋トレは単に筋肉を大きくするためのものではなく、「これからも自分の身体で生活していくための準備」なのかもしれません。

参考文献・出典

  1. Fiatarone MA, Marks EC, Ryan ND, Meredith CN, Lipsitz LA, Evans WJ. High-Intensity Strength Training in Nonagenarians: Effects on Skeletal Muscle. JAMA. 1990;263(22):3029-3034. doi:10.1001/jama.1990.03440220053029

    平均約90歳、最高96歳の高齢者を対象に8週間の高強度筋力トレーニングを実施。筋力は平均174%向上し、大腿部筋面積は約9%増加した。

  2. Grgic J, Garofolini A, Orazem J, Sabol F, Schoenfeld BJ, Pedisic Z. Effects of Resistance Training on Muscle Size and Strength in Very Elderly Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Med. 2020.

    75歳以上を対象とした研究をまとめたシステマティックレビュー・メタ解析。非常に高齢な人でも筋力トレーニングによる筋力向上が認められ、80歳以上に限定した解析でも効果が確認された。

  3. Resistance Exercise Intervention Restores Functional Capacity and Improves Frailty Biomarkers in Centenarians. 2025.

    100歳以上の高齢者を対象に12週間の筋力トレーニングを実施。身体機能やフレイルに関連する指標の改善が報告された。

※本記事は研究報告をもとに一般的な情報を紹介したものです。運動の効果や安全な負荷量には個人差があります。持病や痛みがある方、転倒の危険性が高い方などは、必要に応じて医師や理学療法士などの専門家に相談してください。


✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site

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