障がい児と一緒に逃げるって、無理ゲーだった。令和8年熊本地震を経験して見えた、避難の現実

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障がい児と一緒に逃げるって、無理ゲーだった。令和8年熊本地震を経験して見えた、避難の現実

「地震が起きたら、すぐに避難してください」

防災の話をすると、当たり前のように言われる言葉です。

避難リュックを準備して、家族を連れて、安全な場所へ逃げる。

私もこれまで、当然そうするものだと思っていました。

でも、2026年7月28日、熊本で大きな地震を経験して、考えが変わりました。

障がい児と一緒に逃げるって……これ、無理ゲーじゃない?

これは、「避難したくない」という話ではありません。

「逃げてください」と言われても、物理的に逃げることが難しい家庭があるという話です。

「抱っこして逃げればいい」が、できない

我が家には、歩くことができない子どもがいます。

体重は約15kg。

地震が起きて、「危ない!逃げなきゃ」となったとき、まず考えるのは、

「どうやってこの子を連れて逃げる?」

ということでした。

15kgなら、抱っこできると思う人もいるかもしれません。

でも、障がいの特性によっては、それすら簡単ではありません。

我が家の場合、身体に触れられることを嫌がることがあります。

抱っこしようとすると、身体を反らして逃げようとする。

いわゆる「えびぞり」のような状態になってしまうこともあります。

つまり、

「抱っこして走ればいい」

が成立しない。

防災用に、子どもをおんぶするための帯や、障がい児を支えるための布なども用意しました。

でも、いざというときに、それを取り出して、子どもを乗せて、装着して……。

そんなことを、地震直後の混乱の中で落ち着いてできるのか。

正直、今回経験してみて、

「これは現実的ではないな」

と思いました。

実は、行政にも「支援が必要な人」として登録していた

ここは、今回の経験で特に考えさせられた部分です。

我が家は、災害時に自力で避難することが難しい人を対象とした**「避難行動要支援者名簿」**に、1年前から登録していました。

つまり、行政には、

「我が家には、災害時に自力で避難することが難しい子どもがいます」

という情報は、すでに届いていたわけです。

もちろん、名簿への登録そのものは大切な制度だと思います。

「誰が支援を必要としているのか」を行政が把握することは、災害時の支援を考える上で必要です。

でも、我が家の場合、その後の1年間、

「実際にこの子をどうやって避難させるのか」

という具体的な打ち合わせは、一度もありませんでした。

避難訓練もありませんでした。

  • 「災害が起きたら、誰が迎えに来るのか」
  • 「家から避難所まで、どうやって移動するのか」
  • 「歩けない15kgの子どもを、どう運ぶのか」
  • 「本人が身体に触れられることを嫌がったらどうするのか」
  • 「きょうだいがいる場合はどうするのか」

そういった具体的な話をする機会は、1年間、一度もありませんでした。

そして、そのまま大きな地震が起きました。

「名簿に登録されている」と「実際に逃げられる」は、全く違う

今回、身をもって感じたのは、

「支援が必要な人として把握されていること」と、「実際に避難できること」は別問題だ

ということでした。

名簿に名前が載っている。

それだけでは、15kgの歩けない子どもが、自分の足で避難所へ向かえるようになるわけではありません。

誰かが助けに来てくれるとしても、

「どこから?」

「誰が?」

「何分後に?」

「どうやって?」

という具体的な部分が決まっていなければ、実際の避難にはつながりません。

そして、地震は「今から避難計画を立てます」と待ってくれません。

家が無事だったから、避難できた。でも……

今回、幸いにも我が家は大きな損壊を免れました。

家の中はめちゃくちゃになりました。

テレビや家具が倒れたり、物が散乱したり。

それでも、家そのものが壊れたり、傾いたりすることはありませんでした。

本当に、不幸中の幸いでした。

でも、もし家屋が崩壊するほどの状況だったら?

そう考えると、今でも怖くなります。

例えば、

  • 上の子には走って逃げてもらう。
  • 下の子を抱える。
  • 避難用に準備していたリュックを背負う。
  • そして犬も連れていく。

これを、地震直後に全部同時にできますか?

私には無理です。

少なくとも我が家の場合、「家族全員を連れて速やかに避難」という防災のイメージは、現実とはかなり違いました。

「防災グッズを準備しましょう」だけでは解決しない

災害への備えとして、

「非常食を準備しましょう」

「避難リュックを用意しましょう」

「必要なものを備蓄しましょう」

とよく言われます。

もちろん、備えは大切です。

今回、実際に災害を経験して、我が家で特に役に立ったと感じたのは、

水、シャンプー、ドライシート、身体を拭くためのシート。

一方で、「これは必要」と思って準備していたものの中には、実際にはほとんど使わなかったものもありました。

そして、意外だったのが支援物資です。

地震後、支援物資が届きました。

必要なものがすべて家に備蓄されていなくても、周囲からの支援によって何とか生活することができました。

もちろん、災害の規模や地域によって状況は違います。

「支援物資が来るから備蓄はいらない」と言いたいわけではありません。

ただ、今回の経験で感じたのは、

「何をどれだけ備えるか」だけではなく、「その子をどうやって安全な場所まで移動させるか」を考えることのほうが、障がい児家庭にとっては切実な問題なのではないか

ということでした。

防災の「普通」が、障がい児家庭には当てはまらない

一般的な防災では、

「自分で歩いて逃げる」

「家族で避難する」

「避難リュックを背負って移動する」

ということが、ある程度前提になっています。

でも、歩けない子どもがいる家庭では、その前提が崩れます。

さらに、

  • 身体に触れられることが苦手
  • 抱っこやおんぶが難しい
  • 環境の変化が苦手
  • 大きな音や混乱が苦手
  • 医療的ケアや薬が必要
  • きょうだい児もいる
  • ペットもいる

そんな家庭では、「逃げる」という一言の中に、ものすごい量の課題があります。

だから私は今回の地震を経験して、

「障がい児家庭は、もっと避難の方法そのものを考えなければいけない」

と強く感じました。

「備えていなかった」のではない。「備えていても難しい」

ここは、どうしても伝えたいところです。

障がい児家庭が災害時に避難できなかったとしても、

「ちゃんと備えていなかったから」

と簡単に片付けてほしくありません。

我が家も備えていました。

避難用のリュックも用意していました。

子どもをおんぶするためのものも準備しました。

水も準備しました。

そして、避難行動要支援者名簿にも登録していました。

それでも、

実際に地震が起きてみると、「これを持って逃げれば大丈夫」という単純な話ではありませんでした。

15kgの歩けない子どもをどうするのか。

抱っこできない場合は?

家が崩れそうなときは?

きょうだいは?

犬は?

避難リュックは?

そして地震の直後に、それらを全部同時に判断して行動できるのか。

これは、障がい児を育てている家庭にしか分からない難しさかもしれません。

名簿を「登録して終わり」にしないでほしい

避難行動要支援者名簿への登録は、ゴールではないと思います。

むしろ、そこからがスタートなのではないでしょうか。

「この家庭には、こういう子どもがいます」

と分かったのであれば、

「では、この子をどうやって避難させますか?」

まで、一緒に考えてほしい。

できれば実際に、

  • 「この子を抱えてみる」
  • 「この方法なら移動できるか試してみる」
  • 「避難所まで実際に移動してみる」
  • 「災害時には誰が支援するのか確認する」

そんな訓練までして初めて、「避難計画」と呼べるのではないでしょうか。

もちろん、行政だけにすべてを背負わせたいわけではありません。

家庭側も、自分たちにできる備えを考える必要があります。

でも、家庭だけでは解決できない問題もあります。

15kgの歩けない子どもを、どうやって家から安全な場所まで運ぶのか。

これは、個人の「防災意識」だけでは解決できない問題です。

「逃げる」ための防災から、「逃げられないかもしれない」ことを前提にした防災へ

今回の経験で、私の防災に対する考え方は変わりました。

もちろん、避難できる状況なら避難する。

でも同時に、

「避難できない可能性がある」

ことも考えておかなければならない。

家の中で、どこが一番安全なのか。

家具をどう配置するのか。

水をどこに置くのか。

停電や断水になったらどうするのか。

子どもがパニックになったらどうするのか。

そして何より、

この子を抱えて逃げられない場合、どうやって命を守るのか。

これは「防災グッズを買う」だけでは解決できない問題です。

障がい児家庭の「防災」を、もっと現実に合わせて考えてほしい

今回、我が家は家が無事でした。

そして、周囲から支援物資も届きました。

たくさんの人に助けてもらいながら、何とか乗り越えることができました。

だからこそ思います。

災害が起きたとき、

「自分で逃げてください」

「早めに避難してください」

「必要なものは各家庭で備蓄してください」

と言うだけではなく、

「歩けない子どもを連れて、どうやって逃げるのか」

というところまで、一緒に考えてほしい。

そして、

「避難行動要支援者名簿に登録されているから大丈夫」でもない。

登録されていても、具体的な避難方法を一緒に考えていなければ、実際の災害では困ってしまいます。

障がい児家庭に必要なのは、一般的な防災マニュアルをそのまま当てはめることではありません。

その子の特性、その家庭の人数、きょうだい、ペット、住環境。

一つひとつ違う条件に合わせた「逃げ方」を考えること。

そして、それでも逃げることが難しい家庭があることを知ってもらうこと。

今回の地震で私が一番強く感じたのは、

「障がい児と一緒に逃げるって、想像しているよりずっと難しい。いや、状況によっては本当に無理ゲーなんだ」

ということでした。

だからこそ、障がい児家庭の防災は、

「ちゃんと備えましょう」

だけで終わらせてはいけないと思っています。

「どうすれば、この子と一緒に生き残れるのか」

そこから考える必要があるのだと思います。


✍️ この記事はCOCOSMAM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → www.etsy.com/jp/shop/CalmThreadmeeJP

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