寝不足の顔は、なぜ老けて見える?

寝不足の顔は、なぜ「老けて見える」のか 美容

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寝不足の顔は、なぜ「老けて見える」のか

「昨日寝てないでしょ?」は、顔を見れば分かるのか

朝、鏡を見て思ったことはありませんか?

「……老けた?」

  • 目の下が暗い
  • まぶたが重い
  • 肌に元気がない
  • 顔全体が疲れて見える

でも、そこで一晩ぐっすり眠ると、「あれ、昨日よりマシかも」となる。

では、この違い。単なる気のせいなのでしょうか。

実は睡眠と「顔の見た目」を調べた、かなり面白い研究があります。

結論から言うと、寝不足になると、他人から見ても「疲れている」「不健康そう」と判断されやすくなります。さらに慢性的な睡眠の質の低下は、皮膚バリア機能や皮膚老化の徴候とも関連している可能性があります。

ただし、「一晩寝不足になっただけで皮膚そのものが急激に老化した」という意味ではありません。ここを分けて考えると、睡眠と美容の関係が見えてきます。

人は「寝不足の顔」を見抜けるのか?

2013年、スウェーデンの研究チームが面白い実験を行いました。10人の健康な参加者を、

  • 普通に眠ったあと
  • 31時間睡眠をとらなかったあと

に撮影しました。その写真を40人の評価者に見せます。

すると睡眠不足の顔は、

  • まぶたが垂れている
  • 目が赤い
  • 目が腫れている
  • 目の下が暗い
  • 肌が青白い
  • シワが多く見える
  • 口角が下がっている

などと評価されました。さらに、「疲れて見える」「悲しそうに見える」という評価も増えました。

つまり、「寝てないでしょ?」は意外と顔から分かるのです。

なぜ寝不足だと「老けて」見える?

ここで重要なのは、一晩で突然コラーゲンが大量に消えて、10歳老化したわけではないことです。

私たちが人の年齢や健康状態を判断するとき、一本のシワだけを見ているわけではありません。

  • まぶた
  • 肌の色
  • 口角
  • 表情
  • 顔全体のコントラスト

さまざまな情報を一瞬で処理しています。

睡眠不足では、その複数の要素が同時に「疲労側」へ変化します。その結果、実際の年齢が変わっていなくても、「老けて見える」可能性があるわけです。

「目の下のクマ」は寝不足でできる?

寝不足=クマ。これは定番ですよね。

ただし、クマは一種類ではありません。

  • 皮膚の色素
  • 血管の見え方
  • 皮膚の薄さ
  • 目の下のくぼみ
  • 脂肪
  • アレルギー
  • 加齢

など、複数の原因があります。そのため、「クマがある=寝不足」とは限りません。

一方で先ほどの実験では、睡眠不足後の写真は実際に「目の下が暗い」と評価されました。

面白いのはここです。本当に色素沈着が一晩で増えたとは考えにくい。むしろ、

  • むくみ
  • 血流
  • 皮膚の色
  • 目の周囲の形

などが変化することで、「クマが濃くなったように見える」可能性があります。

前に紹介した「ほうれい線は線というより地形と影」という話にも少し似ています。顔の見た目は、皮膚だけで決まっているわけではないのです。

寝不足だと「魅力」まで変わる?

さらに容赦のない研究があります。

2017年、25人を対象に、

  • 2日間しっかり眠った状態
  • 2日間睡眠を約4時間に制限した状態

で顔写真を撮りました。その写真を122人に評価してもらいました。

すると睡眠不足の写真は、「魅力が低い」「健康的に見えない」「眠そうに見える」と評価されました。

さらに評価者は、睡眠不足の状態の人とは「交流したい」という意欲も低く評価しました。なかなか厳しい結果です。

でもこれは、「美人かどうか」という単純な話ではありません。人間は顔から、

  • 疲労
  • 病気
  • 感情
  • 健康状態

などを推測しています。睡眠不足の顔に現れる小さな変化を、私たちは無意識に読み取っている可能性があるのです。

では、寝れば元に戻る?

ここは安心していいところです。

急性の睡眠不足で起きる「疲れて見える」という変化の多くを、そのまま永久的な皮膚老化と考える必要はありません。

つまり、

昨日4時間しか寝なかった → 今日シワが目立つ → そのシワが一生残る

ということではありません。

  • 顔色
  • むくみ
  • 目の状態
  • 表情
  • 眠気

こうした一時的な変化が顔の印象に影響している部分があります。

だから、寝不足翌日の鏡を見て、「一晩で5歳老けた!」と絶望する必要はありません。まず寝ましょう。

では「慢性的な寝不足」は?

ここから話が変わります。一晩の寝不足ではなく、毎日のように睡眠の質が悪い場合です。

2015年には、60人の健康な女性を対象に、睡眠の質と皮膚機能を調べた研究が発表されています。睡眠の質が良い群と悪い群を比較したところ、睡眠の質が良い人では、皮膚バリアを乱した後の回復が良好でした。さらに内因性皮膚老化を評価する指標でも、良好な睡眠群の方が低いスコアでした。

つまり睡眠は、「翌朝の顔色」だけではなく、皮膚そのものの機能とも関係している可能性があります。

ただし注意点があります。これは観察的な要素を含む研究です。

  • 睡眠が悪いから皮膚が老化したのか
  • 生活習慣など別の要因が両方に影響しているのか

完全に切り分けることはできません。だから、「睡眠不足=シワができる」と単純化するのはまだ早いのです。

皮膚は寝ている間に何をしている?

私たちの身体には約24時間周期の概日リズムがあります。皮膚も例外ではありません。

皮膚の、

  • 細胞増殖
  • バリア機能
  • 水分蒸散
  • 血流
  • 温度

などには日内変動が存在することが報告されています。つまり皮膚は、24時間ずっと同じ状態ではありません。昼と夜で働き方が変化しています。

だから睡眠と皮膚の関係を考えるとき、単純に「寝ている間だけ肌が修復される」というより、睡眠・概日リズム・ホルモン・免疫・皮膚バリアなどが複雑に関係していると考える方が正確です。

「22時~2時がお肌のゴールデンタイム」は?

美容で有名な話があります。「22時から深夜2時は肌のゴールデンタイムだから、その時間に寝ないといけない」。聞いたことがありますよね。

これは少し単純化しすぎです。確かに睡眠初期の深い睡眠などと成長ホルモン分泌には関係があります。しかし、時計が22時になった瞬間に肌の修復スイッチが入り、2時になった瞬間に終了するという仕組みではありません。

睡眠のタイミングは、

  • 個人の概日リズム
  • 睡眠時間
  • 睡眠の規則性
  • 光環境

などとも関係します。「22時に寝られなかった!美容終了!」と焦る必要はありません。むしろ、十分な睡眠時間を確保する、なるべく規則的に眠る、という基本の方が大切です。

じゃあ何時間寝れば美肌になる?

ここで、「では7時間寝れば肌がきれいになる?」と思いますよね。

残念ながら、「○時間寝ればシワが○%減る」という美容の公式はありません。必要な睡眠時間には個人差があります。

ただ、成人の健康という観点では、米国睡眠医学会と睡眠研究学会は成人が定期的に7時間以上眠ることを推奨しています。

重要なのは、美容のためだけに寝るというより、健康に必要な睡眠を取った結果として、皮膚にもメリットが期待できる、という順番でしょう。

高級美容液を塗って、睡眠を削る

ちょっと想像してください。

夜11時。高級化粧水。美容液。レチノール。クリーム。丁寧に全部塗ります。そして午前2時までスマホ。朝6時起床。

……少しもったいない気がしませんか?

もちろん、「化粧品をやめて寝れば全部解決」という話ではありません。でも美容を考えるとき、化粧品には何万円も払うのに、睡眠は平気で削るという逆転が起こることがあります。

睡眠は美容液ではありません。でも身体全体の健康を支える生理現象です。皮膚だけ切り離して考えることはできません。

「寝だめ」で肌は復活する?

休日に12時間寝れば、平日の睡眠不足を全部帳消しにできる。そう考えたくなります。

しかし慢性的な睡眠不足の影響を、週末の長時間睡眠だけですべて相殺できるとは限りません。睡眠では、時間だけでなく、規則性も重要です。

美容のために特別な「美容睡眠」をする必要はありません。普通に、必要な睡眠をなるべく毎日確保する。これが一番地味で、一番現実的です。

寝る前のスマホは肌に悪い?

ここも少し整理しましょう。「スマホのブルーライトで肌が老化する!」という話もあります。

可視光が皮膚に与える影響については研究されていますが、通常のスマートフォン使用による光が、日常生活でどの程度皮膚老化に寄与するかについては、紫外線ほど強いエビデンスが確立しているわけではありません。

むしろ現実的に重要なのは、スマホを見続けて寝る時間が遅くなることかもしれません。画面そのものより、「あと一本だけ動画を見よう」が美容の敵になることがあります。

美容のために「寝る」は、かなりコスパがいい

ここまでの美容シリーズでは、顔マッサージ。コラーゲン。化粧水。紫外線。レチノール。いろいろ見てきました。

でも睡眠には少し違う特徴があります。肌だけではありません。

  • 免疫
  • 代謝
  • 循環
  • 精神機能

身体全体に関係します。つまり、美容のために睡眠を整えたら、美容以外にもメリットがある。これはかなりお得です。

今夜できる美容は、化粧品だけではない

もし今夜、「肌のために何か一つしよう」と思ったら、新しい美容液を検索する前に、

  • スマホを少し早く置いてみる
  • 照明を落とす
  • 明日の準備を済ませる
  • そして少し早く布団に入る

それでも十分、美容のための行動です。

寝不足の翌日、鏡の中の自分を見て、「老けた……」と思うことがあります。でもその顔は、突然老化した顔ではありません。身体が、「今日はちょっと休ませて」と言っている顔なのかもしれません。

美容というと、顔に何をするかばかり考えます。でも、顔を休ませるために、身体ごと眠る。これも立派なスキンケアです。

そして何より、無料です。

 

美容の”常識のウソ”を科学で検証したまとめはこちら → 美容の常識を科学で検証【まとめ】

 

主な参考文献

  • Sundelin T, et al. Cues of fatigue: effects of sleep deprivation on facial appearance. Sleep. 2013;36:1355–1360.
    睡眠不足後の顔写真が、目の腫れ、目の下の暗さ、肌の青白さ、シワ、疲労感などでどのように評価されるかを調べた実験です。(PubMed)
  • Sundelin T, et al. Negative effects of restricted sleep on facial appearance and social appeal. R Soc Open Sci. 2017;4:160918.
    睡眠制限後の顔が、健康、魅力、眠気、他者からの交流意欲などにどう影響するかを検討した研究です。(PubMed)
  • Oyetakin-White P, et al. Does poor sleep quality affect skin ageing? Clin Exp Dermatol. 2015;40:17–22.
    睡眠の質と皮膚老化徴候、皮膚バリア回復などの関連を調べた研究です。(PubMed)
  • Lyons AB, et al. Circadian rhythm and the skin: a review of the literature. J Clin Aesthet Dermatol. 2019;12:42–45.
    皮膚機能と概日リズムの関係についてまとめたレビューです。(PubMed)
  • Watson NF, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult. Sleep. 2015;38:843–844.
    成人の健康維持のため、定期的に7時間以上の睡眠を推奨した米国睡眠医学会・睡眠研究学会のコンセンサス勧告です。(PubMed)

✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site

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