高い化粧水ほど肌に効く?

高い化粧水ほど肌に効く?その思い込みを科学で解き明かす 美容

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高い化粧水ほど肌に効く?その思い込みを科学で解き明かす

ドラッグストアには1,000円の化粧水。デパートには1万円を超える化粧水。さらに高価なものになると、1本数万円。同じ「化粧水」なのに、価格は10倍、20倍にもなります。

ここまで違うと、

  • 「高いものほど肌の奥まで浸透するのでは?」
  • 「高級な成分が入っているから、やっぱり肌にいいのでは?」

と思いますよね。では実際、高い化粧水ほど肌をきれいにしてくれるのでしょうか。

結論から言うと、「価格が高いほど肌への効果が高い、という科学的根拠はありません」。ただし、「高い化粧品には意味がない」という話でもありません。大切なのは値段ではなく、「何を目的に、何が入った製品を使っているのか」です。

その理由を知るために、まず皮膚の一番外側を見てみましょう。

私たちの身体は、実は水だらけ

人間の身体のかなりの部分は水です。それなのに、私たちは歩いていても身体から水がどんどん流れ出して干からびることはありません。なぜでしょう。

その重要な役割を担っているのが、「角層」です。皮膚の一番外側にある、わずか十数~数十μmほどの薄い層です。とても薄いのですが、身体を外界から守る重要なバリアになっています。

角層は「レンガとモルタル」

皮膚科学では角層の構造を、「レンガとモルタル」に例えることがあります。

  • レンガにあたるのが角質細胞
  • その隙間を埋めるモルタルにあたるのが、セラミド・コレステロール・遊離脂肪酸などを含む細胞間脂質

さらに角質細胞の内部には、天然保湿因子(NMF)と呼ばれる、水分保持に関係する成分があります。

この構造によって、身体の中から水分が逃げすぎることを防ぎ、外から異物が簡単に入ってくることも防いでいます。つまり肌は、「水分を入れる」こと以上に、「水分を逃がさない」ことが重要なのです。

化粧水を塗ると肌が潤うのはなぜ?

洗顔後に化粧水をつけると、しっとり、ひんやり、もちもち。確かに肌が潤った感じがします。これは嘘ではありません。

化粧水には水だけでなく、グリセリン、ヒアルロン酸、尿素など、水分を保持する働きを持つ成分が配合されることがあります。こうした成分は「ヒューメクタント」と呼ばれます。角層の水分量を増やすことに役立ちます。

だから、「化粧水は全部意味がない」というのも極端です。ただし、ここで一つ問題があります。

水を塗っただけでは、その水は逃げていく

手を水で濡らしてみてください。最初は潤います。でも、しばらくすると乾きます。当然ですよね。水は蒸発するからです。

皮膚でも似たことが起こります。肌の保湿を考えるとき重要になる指標の一つが、TEWL(経皮水分蒸散量)です。簡単に言えば、「皮膚からどれくらい水分が逃げているか」を表します。皮膚バリアが乱れると、身体内部から水分が逃げやすくなります。

だから保湿では、

  • 水分を与えること
  • 水分を保持すること
  • 逃げにくくすること

が重要になります。

そこで乳液やクリームが登場する

乳液やクリームには、油性成分などによって皮膚表面からの水分蒸散を抑える役割があります。

代表的なのが、ワセリンです。非常に地味です。高級感もあまりありません。しかし皮膚科学では昔から使われてきた、優秀な閉塞性保湿剤です。ワセリンは皮膚表面に膜を作り、水分が逃げるのを抑えます。

一方、セラミドなどを含む製品では、角層の脂質構造を補うという考え方もあります。

つまり保湿には大きく、

  • 水分を引き寄せる
  • 水分を逃がさない
  • 皮膚バリアを補う

という複数の考え方があります。「化粧水をたくさん入れ込む」だけが保湿ではありません。

「肌の奥まで浸透」の“奥”ってどこ?

化粧品広告でよく見る言葉があります。「肌の奥まで浸透」。なんとなく、美容成分が皮膚のずっと奥まで入っていくイメージを持ちませんか?

しかし日本では、化粧品広告で「浸透」と表現する場合、原則として角質層までの浸透を意味するような適切な表現が求められています。

そもそも角層は、外から物質を簡単に通さないために存在するバリアです。何でも簡単に真皮まで届いてしまったら、化粧品以前に、汗、汚れ、化学物質、細菌、あらゆるものが身体へ侵入してしまいます。皮膚が優秀だからこそ、化粧品も簡単には通さないのです。

では、美容成分は全部表面にいるだけ?これも違います。皮膚を通過できるかどうかは、

  • 分子量
  • 脂溶性
  • 濃度
  • 製剤
  • 皮膚の状態

などさまざまな条件に左右されます。薬剤ではこの性質を利用して、貼り薬や経皮吸収型製剤なども作られています。

つまり、「皮膚から何も入らない」わけではありません。しかし、「塗った成分が全部そのまま真皮まで届く」わけでもありません。ここでも答えは白黒ではないのです。

高級化粧水は何が違うの?

では、1,000円と1万円の化粧水。何が違うのでしょう。これは製品によって全く違います。例えば、

  • 美容成分
  • 濃度
  • 製剤技術
  • 香料
  • 使用感
  • 容器
  • 研究開発費
  • 広告費
  • ブランド価値

など、さまざまなものが価格に含まれています。高価な製品の方が優れた製剤技術を使っている可能性もあります。逆に、価格の差がそのまま皮膚への効果の差というわけでもありません。

車と少し似ています。500万円の車が100万円の車より5倍速く走るわけではありません。価格には、機能以外の価値も含まれています。

化粧品も同じです。香りが好き、容器を見ると気分が上がる、毎晩スキンケアする時間が楽しい。これらも立派な価値です。ただ、「高い=医学的効果が高い」とは別の話なのです。

スキンケアで本当に重要なのは?

では、何を選べばいいのでしょう。まず考えたいのは、「何を改善したいのか」です。

  • 乾燥が気になる
  • シワが気になる
  • ニキビが気になる
  • シミが気になる
  • 肌荒れが気になる

これらは全部違う問題です。

例えば乾燥肌なら、高級美容成分を探す前に、刺激の少ない洗浄、適切な保湿、皮膚バリアを守るという基本が重要になります。

一方、光老化やシワを考えるなら、紫外線対策や、レチノイドなど、比較的研究の蓄積がある成分という選択肢があります。目的によって選ぶものが変わるのです。

実は「洗いすぎ」も考えたい

肌をきれいにしようとして、クレンジング、洗顔、スクラブ、ピーリング、拭き取り化粧水と何段階も行う人もいます。もちろん必要な場合もあります。

しかし、洗浄によって皮膚表面の脂質などが過剰に除去されれば、皮膚バリアに影響する可能性があります。「汚れを完全に落とす」ことだけを目標にすると、肌を守っているものまで落としてしまうことがあります。

スキンケアは、足すことだけではありません。「取りすぎない」ことも大切です。

美容液を10種類重ねれば10倍効く?

これも考えてみましょう。ビタミンC、レチノール、ナイアシンアミド、セラミド、ヒアルロン酸、ペプチド。美容成分はたくさんあります。すると、「全部使えば最強では?」と思います。

でも、必ずしもそうではありません。成分によっては刺激が出ることがあります。特に複数の刺激性成分を一度に使えば、赤み、乾燥、ヒリヒリ感などが出ることもあります。そして肌が荒れてしまえば、「美容のために始めたスキンケアで肌の調子を崩す」という本末転倒なことになります。

新しい成分を試すなら、一度に全部ではなく、一つずつ。これはかなり大切です。

では、最低限何をすればいい?

美容情報が多すぎて分からなくなったら、一度ものすごくシンプルに考えてみましょう。

  • 必要に応じて優しく洗う
  • 保湿する
  • 紫外線対策をする

  • メイクや日焼け止めなどを適切に落とす
  • 優しく洗う
  • 保湿する

まずはこれ。そこから、ニキビ、色素沈着、シワなど、自分の悩みに合わせて必要なものを追加する。10種類の化粧品を使わなくても、スキンケアは成立します。

一番高価な化粧品より、日焼け止め?

ここは前の記事ともつながります。皮膚老化を考えるなら、紫外線対策は非常に重要です。

2013年に発表されたランダム化比較試験では、903人を対象に日焼け止めの使用と皮膚老化について調べました。約4.5年後、毎日日焼け止めを使用するよう指示された群では、任意使用群より皮膚老化の進行が少なかったことが報告されています。

美容液ではありません。高級クリームでもありません。日焼け止めです。非常に地味です。でも、こういうところに強い研究があります。

高級化粧品を買うことは悪いこと?

もちろん、そんなことはありません。好きなブランドを使う、香りを楽しむ、パッケージを見るだけで気分が上がる、スキンケアの時間が一日の楽しみになる。それなら十分価値があります。

美容には、医学的効果だけでなく、楽しさもあります。

問題なのは、「高いから効くはず」と考えてしまうこと。値段ではなく、目的、成分、刺激性、自分の肌との相性、そして研究を見る。そうすると化粧品売り場の見え方が少し変わってきます。

肌は「入れる」より「守る」

私たちは美容というと、何を塗るか、何を飲むか、何を足すか、ばかり考えがちです。

でも皮膚にはもともと、身体の水分を逃がさず、外界から身体を守る非常に優秀な仕組みがあります。だからスキンケアの基本は、肌に何かを大量に入れることではなく、その仕組みを邪魔しないこと。そして、紫外線などから守ること。

高価な化粧水を買う前に、一度、自分の洗面台を見てみてください。本当に必要なのは、もう一本増やすことではなく、少し減らすことかもしれません。

 

美容の”常識のウソ”を科学で検証したまとめはこちら → 美容の常識を科学で検証【まとめ】

 

主な参考文献

  • Lodén M. Role of topical emollients and moisturizers in the treatment of dry skin barrier disorders. Am J Clin Dermatol. 2003.
    保湿剤、角層、水分保持、皮膚バリアについてまとめたレビュー。(PubMed)
  • Rawlings AV, Harding CR. Moisturization and skin barrier function. Dermatol Ther. 2004.
    角層、天然保湿因子、細胞間脂質など皮膚の保湿機構についてのレビュー。(PubMed)
  • Proksch E, Brandner JM, Jensen JM. The skin: an indispensable barrier. Exp Dermatol. 2008.
    皮膚バリアの構造と機能についてまとめたレビュー。(PubMed)
  • Draelos ZD. The science behind skin care: Moisturizers. J Cosmet Dermatol. 2018.
    ヒューメクタント、エモリエント、閉塞性成分など、保湿剤の働きについて解説したレビュー。(PubMed)
  • Hughes MCB, et al. Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013.
    903人を対象に日常的な日焼け止め使用と皮膚老化を調べたランダム化比較試験。(PubMed)
  • 公益社団法人 日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」
    化粧品広告における「浸透」などの表現について確認できます。(日本化粧品工業会)

✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site

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