📂 健康・からだ
エストロゲンは骨や血管まで守る全身のホルモン
骨密度が下がりはじめる年齢が、女性だけ50歳前後にそろっているのを不思議に思ったことはないでしょうか。その裏側にいるのが、エストロゲンというひとつのホルモンです。「女性ホルモン」という呼び名のせいで月経や妊娠にだけ関わるものだと思われがちですが、実際には骨や血管、脳、皮膚にまで手を伸ばしています。
卵巣から出て、体じゅうに届いている
エストロゲンは主に卵巣でつくられます。子宮の内側をふかふかに厚くして受精卵を迎える準備をするのがよく知られた仕事ですが、それは担当業務の一部でしかありません。骨をつくる細胞と壊す細胞の両方に働きかけたり、血管をしなやかに保ったり、コレステロールの代謝に関わったり。肌の張りや、脳の働き、気分の安定にも関係していると考えられています。
受け取る側の細胞が体じゅうに散らばっているので、一種の連絡係のような立ち位置だと思うと近いかもしれません。届け先が多いぶん、量が変わったときに体のあちこちが同時に反応する。そう考えると、後で出てくる話がつながりやすくなります。
ひと月のなかで、増えたり減ったり
月経周期のあいだ、エストロゲンの量はずっと一定というわけではありません。月経が終わったころから排卵に向けて増え、排卵の後にいったん下がり、もう一度少し持ち直してから月経前に落ちていく。この波に合わせて肌の調子や気分、体のだるさが動く人は少なくありません。
予定を詰めたのに体がついてこない週がある、と感じるとしたら、気合いの問題ではなく体内の濃度が動いているだけ、ということもあります。周期のどこで調子が上がり、どこで沈むかは人によってかなり違うので、誰かのペースと比べて落ち込む必要はないと思います。手帳やアプリに体調をひと言だけ残しておくと、自分の波が見えてきます。
閉経の前後で、ゆらぎながら減っていく
日本人女性の閉経の平均年齢はおよそ50.5歳とされ、その前後10年ほどをまとめて更年期と呼びます。この時期のエストロゲンは、まっすぐな下り坂を降りるというより、大きくゆらぎながら低下していくと説明されています。
ほてり、発汗、動悸、気分の落ち込み、関節の痛み。更年期の症状は100種類くらいあるとも言われるほど幅があり、ほとんど気づかないまま過ぎる人もいれば、生活に支障が出る人もいます。症状の重さは、我慢強さや性格とは関係がありません。
つらいと感じたら、婦人科などの医療機関に相談してみてください。ホルモン補充療法や漢方薬といった選択肢があり、体質や持病、これまでの経過を踏まえて医師と一緒に決めていくものです。低用量ピルも同じで、合うかどうかは診察のうえで判断されます。自分で調べて抱え込むより、専門家に一度見てもらったほうが早い場面は多いはずです。
骨粗しょう症が女性に多い理由
骨は毎日、古いところが壊され、新しくつくり直されています。エストロゲンは、この壊す側の細胞をなだめる役をしていると考えられています。骨量は20歳代でピークを迎え、40歳代からゆるやかに減りはじめ、閉経のころに急な下り坂になると報告されています。
なだめ役が引いていけば、壊す方が勝ちやすくなる。女性に骨粗しょう症が多い背景には、こうした事情があります。血中のLDLコレステロールが50歳を境に上がりやすくなり、それまで少なかった動脈硬化が増えてくるのも、同じ流れのなかの話とされています。
男性の体にもエストロゲンはあります。男性ホルモンの一部が体内で作り変えられてできるもので、量は多くありませんが、骨の健康などに関わっていると考えられています。女性だけのホルモンではない、というわけです。
日常でできることは、地味なものばかり
減ったホルモンを、食事や運動で元どおりに戻せるわけではありません。それでも、骨や血管への負担を減らす暮らし方はあります。
- 歩く、階段を使う、軽い筋トレをするといった骨に体重がかかる運動
- カルシウムやたんぱく質をとり、日光を少し浴びること
- 睡眠時間を削らないこと
派手さはないけれど、この年代の体には効いてきます。
大豆イソフラボンやエクオールについては、更年期の不調がやわらいだという報告もありますが、感じ方には大きな個人差があり、誰にでも同じように効くとは言えません。試すなら期待しすぎず、体調が気になるときは医療機関の判断を優先してください。
体の変化を自分の努力不足のせいにしない。たぶん、それが一番大事です。
参考・出典
- 更年期障害について|女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)
- 更年期障害|日本産科婦人科学会
- 閉経後骨粗鬆症|一般の皆様へ|日本内分泌学会
- 女性および高齢者の脂質異常症|女性の健康推進室 ヘルスケアラボ
この記事は、公開されている研究・公的情報をもとに、縁ノート編集部(理学療法士 監修)が作成しています。効果を保証するものではなく、体調の感じ方には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。


