📂 AI・テクノロジー
いつもの散歩道が、江戸の街道になるアプリを作りました
毎日通っている道なのに、ある日ふと、見たことのない路地に気づくことがあります。前からそこにあったはずなのに、目に入っていなかっただけ。散歩の面白さは、たぶんそういう瞬間にあります。歩数を稼ぐことでも、消費カロリーを眺めることでもなく。
その「気づく」をもう少しだけ増やせないかと思って、iPhoneのアプリを作りました。「あしあと」といいます。App Storeで公開したばかりです。
いつもの道が、東海道になる
ヘルスケアの歩数を読み取って、歩いた分だけ江戸時代の街道を進みます。今は東海道と中山道。宿場に着くと、その土地を描いた浮世絵が一枚ずつ図鑑に増えていきます。広重の東海道五十三次と木曾街道六十九次は、実際に描かれた本物をそのまま使いました。
歩みを重ねると、動物の仲間がひとりずつ増えていきます。お気に入りの子を旅の案内人にしておくと、朝にひとことや、その土地の豆知識を届けてくれる。顔ぶれが全部そろったとき、ちょっとした仕掛けに気づくかもしれません。
コンビニまでの三百歩が、次の宿場までの三百歩になる。たったそれだけのことなのに、同じ道が少し違って見えます。
自分で道を決める
歩けるのは五街道だけではありません。地図で出発地と目的地を選べば、自分だけの道をつくって旅ができます。
たとえば横浜から函館まで。実家から今住んでいる街まで。いつか行ってみたい町まで。経由地を足して、わざと遠回りの道順にすることもできます。津軽海峡のような海も、旅としてはちゃんと越えられます。
自分で決めた道にも、名所カードは現れます。そのルートを通った人にしか出会えないカードがある、ということです。
今日の三千歩で函館にどれだけ近づいたのか。それが分かるだけで、帰り道の足取りは少し変わります。
道中で、図鑑カードに出会う
街道を進んでいる途中には、名所の発見イベントが待っています。そこで手に入るカードが図鑑に載り、行ったことのない土地の名前と景色が、歩くたびに手元へ集まってくる。
日本にこんな場所があったのか、と思う瞬間があります。それが歩いた分だけやってくる、という作りにしました。
こんな綺麗な場所があったんだ、を残す
いちばん入れたかったのが、この機能です。
散歩の途中で見つけた景色を、写真とメモで自分の地図に残せます。名前も知らない小さな神社、朝だけ光が差し込む土手、季節はずれに咲いていた花。撮っておかないと、たいてい忘れてしまう類のものです。
残した一枚は、公開範囲を自分で選べます。自分だけにしておけば端末の中に留まりますし、友だちまでにすると、友だちの地図にその景色が現れる。誰かが撮った一枚が、別の誰かの明日の散歩コースを変えることがある。そんな再発見が起きたらいいなと思って作りました。
自宅など知られたくない場所は「守りたい場所」に登録しておくと、その近くから投稿したときに自動で自分だけになります。安心して残せることのほうが先だと考えました。
仲間と歩数を合わせると、どこまで行けるか
友だちとグループを作ると、全員の歩数が合算されます。報告も入力もいりません。歩けば勝手に足されていきます。
面白いのは、その合計が実際の道のりで計算されるところです。地図上の直線ではなく、本当に歩いたらどう進むかの道なり。三人で歩けば来週にはどのあたりまで行けるのかが見える。ひとりでは届かない場所に、みんなの足で着きます。
離れて暮らす親子や、なかなか会えない友人どうしで、同じ目的地を目指すのに向いていると思っています。
これから増やしていくもの
街道は今のところ二本です。日光街道、奥州街道、甲州街道と、順に足していきます。
もうひとつ力を入れたいのが、仲間たちの物語です。彼らにはそれぞれ、歩く理由があります。今も宿場ごとに少しずつ会話が進んでいきますが、ここはまだ良くできる。歩いた先に続きが待っている、という状態にしていきたいと思っています。
写真で残した発見を、このアプリを使っている人みんなに届けられるようにするのも、これからの宿題です。知らない人に写真が渡る仕組みは、安全のための備えをきちんと整えてから開けたいので、今は準備中にしてあります。
楽しいから歩く、でいい
運動疫学研究に載った原田和弘さんの総説に、こんな整理があります。他者からの推奨や報酬、義務感といった外から来る動機よりも、楽しみ、挑戦、満足感といった内から湧く動機のほうが、身体活動を促すうえで重要だと示唆されている。
厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は、成人に一日およそ八千歩以上に相当する身体活動をすすめています。目安としては大事な数字です。ただ、その八千歩を、義務として数えるか、旅の続きとして数えるかは選べるはずです。
散歩が楽しくなってくれたら、それでいいと思って作りました。今のところ無料で、広告も入れていません。iOS 17以上のiPhoneでお使いいただけます。
まだまだ改良の余地のあるアプリです。それでも、使ってみてくださった方の毎日に歩くことが少しでも入り込んだなら、これ以上うれしいことはありません。
体を動かすことに不安のある方や持病のある方は、無理のない範囲で。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
参考・出典
- 身体活動の促進に関する心理学研究の動向:行動変容のメカニズム,動機づけによる差異,環境要因の役割|運動疫学研究 15(1), 2013
- 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省
- あしあと – 小さな発見の旅|App Store
この記事は、公開されている研究・公的情報をもとに、縁ノート編集部(理学療法士 監修)が作成しています。効果を保証するものではなく、体調の感じ方には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。


