📂 美容
毛穴は開いたり閉じたりする? 美容常識のウソとホント
「まず蒸しタオルで毛穴を開きます」
「汚れをしっかり落としたら、最後は冷水で毛穴をキュッと閉じましょう」
一度は聞いたことがありませんか?
温めれば開く。冷やせば閉じる。なんとなく納得できる説明です。
実際、お風呂上がりには毛穴が目立つような気もするし、冷たい水で顔を洗うと肌が引き締まったようにも感じます。
では本当に、毛穴はドアのように開いたり閉じたりしているのでしょうか。
結論から言うと、「毛穴そのものが、温度に応じて自由に開閉するわけではありません」です。
でも、「じゃあ温めても冷やしても何も変わらない」という話でもありません。
ここが今日の面白いところです。
そもそも「毛穴」って何?
毛穴という名前から、皮膚に小さな穴が開いているようなものを想像するかもしれません。
実際には多くの場合、毛包という構造の出口です。
皮膚の中には毛があり、その周囲を毛包が取り囲んでいます。さらに多くの毛包には皮脂腺がつながっています。皮脂腺で作られた皮脂は毛包を通って皮膚表面へ出てきます。
つまり毛穴は、単なる「穴」ではなく、
- 毛
- 毛包
- 皮脂腺
などからなる構造の一部なのです。
毛穴には「開閉する筋肉」がない
ここが一番大切です。
例えば瞳孔。明るい場所では小さくなり、暗い場所では大きくなります。これは虹彩にある筋肉によって調節されています。
血管も同じです。血管壁には平滑筋があり、収縮・拡張によって血管径を調節できます。
では毛穴は?
毛穴の入口には、「暑いから開けよう」「寒いから閉めよう」と穴の大きさを自由に調節する括約筋のような仕組みはありません。
そのため、
温水をかける→毛穴がパカッと開く
冷水をかける→毛穴がキュッと閉じる
という説明は、解剖学的には正確ではありません。
じゃあ、なぜお風呂で毛穴が開いたように見える?
ここで疑問が出ます。
「でも実際、お風呂上がりって毛穴が目立たない?」
確かに見え方が変わることはあります。ただし、それをそのまま「毛穴が開いた」と解釈する必要はありません。
温まることで、
- 皮膚表面の皮脂が柔らかくなる
- 角層が水分を含む
- 皮膚血流が変化する
といった現象が起こります。さらに洗顔前なら、毛穴周囲に皮脂などが存在しています。温めることで皮脂や汚れを落としやすい状態になることは考えられます。
つまり、「温めると毛穴という穴が開く」のではなく、「毛穴周辺の環境が変わる」と考えた方が近いのです。
冷水で「毛穴が閉じた!」と感じる理由
では冷水はどうでしょう。
冷たい水で顔を洗うと、キュッ。と引き締まった感じがします。
この感覚自体は嘘ではありません。低温刺激によって皮膚血管が収縮するなど、皮膚には生理的な変化が起こります。皮膚表面の状態や赤みなどが変化すれば、「引き締まった」と感じることもあります。
しかし、それは毛穴の入口にある筋肉が収縮して穴を閉じたという意味ではありません。
しかも、その変化は基本的に一時的です。朝に冷水で洗ったから、夜まで毛穴が閉じたままになるわけではありません。
そもそも、なぜ毛穴は大きく見えるの?
ここを知ると対策が変わります。
毛穴の目立ちやすさには、
- 皮脂分泌量
- 毛包の大きさ
- 毛穴周囲の皮膚構造
- 年齢
- 性別
- ホルモン
- ニキビ
- 紫外線
など、さまざまな要因が関係します。
特に皮脂分泌量と毛穴の大きさには関連があることが報告されています。皮脂の多い人ほど、毛穴が目立ちやすい傾向があるのです。
さらに加齢によって皮膚の弾力性が変化すると、毛穴周囲の形状も変わります。若い頃は丸く見えていた毛穴が、縦方向に伸びたように見えることもあります。これがいわゆる、「たるみ毛穴」と呼ばれる状態の一部です。
つまり、毛穴が目立つ=毛穴が開いているとは限りません。
「黒い毛穴」は穴が大きいとは限らない
鼻の黒いポツポツ。気になりますよね。
これを見て、「毛穴の奥に汚れが詰まっている!」と思って、強く押し出したくなる人もいるでしょう。
代表的なものの一つが、開放面皰。いわゆる黒ニキビです。毛包の中に皮脂や角化物などがたまり、入口が開いて表面が黒く見えます。
この黒色は単純に、「汚れが黒くなった」という話ではありません。皮脂成分などの酸化やメラニンなどが黒色に関係すると考えられています。
だから、「汚いから黒い」と考えてゴシゴシ洗うのは違います。
鼻の黒い点、全部が黒ニキビでもない
もう一つ知っておきたいものがあります。「皮脂腺フィラメント」です。
鼻を見ると、小さな白~灰色っぽい点が均等に並んでいることがあります。これは病的なニキビではなく、毛包内に皮脂や角質などが存在して見えている正常な構造です。
押すとニュルッと出てくることがあります。すると、「取れた!」と思います。でも皮脂腺はなくなっていません。当然、また皮脂は作られます。だからしばらくすると戻ってきます。
毎日のように押し出す必要はありません。むしろ強く圧迫すれば、皮膚への刺激になります。
毛穴パックで取れる白いトゲトゲは?
これも気持ちいいですよね。
鼻パックを剥がすと、白いトゲトゲがびっしり。「こんなに汚れていたの!?」と思います。
確かに角栓などの一部を物理的に除去できます。ただし、角栓を抜いた=毛穴そのものが小さくなったではありません。
さらに皮脂や角質は再び作られます。そのため、「一度全部抜けば毛穴がなくなる」というものではありません。
毛穴を本当に小さくすることはできる?
ここは少し難しいところです。
生まれ持った毛包そのものを、スキンケアだけで永久に消すことはできません。毛穴は身体の正常な構造だからです。
しかし、「目立ちにくくする」ことは考えられます。例えば皮脂分泌や角化が関係する場合には、それらへのアプローチがあります。
研究されている成分の一つが、レチノイド。レチノイドは角化や皮膚構造に作用し、ニキビ治療や光老化など幅広く研究されています。
また、サリチル酸なども角質や毛穴詰まりへのアプローチとして使用されます。
ただし刺激が出る場合があるため、「毛穴に効くらしいから全部使う」というのはおすすめできません。
毛穴が気になる人ほど「こすらない」
毛穴を見つけると、取りたい。押したい。削りたい。という気持ちになります。
でも皮膚は床ではありません。強く磨けばきれいになるわけではありません。
- スクラブでゴシゴシ
- ブラシでゴシゴシ
- 角栓を爪で押し出す
- 毎日毛穴パック
こうした強い物理刺激によって皮膚に炎症が起きれば、むしろ肌の状態を悪化させる可能性があります。特にニキビを強く潰すことは、炎症や瘢痕につながる可能性があります。
「毛穴を消したい」という気持ちが、「皮膚を傷つける」行動にならないよう注意が必要です。
毛穴ケアの現実的な答え
では結局、どうすればいいのでしょう。
まず、優しく洗う。皮脂は落としたいですが、強くこする必要はありません。
次に、適切に保湿する。
そして、紫外線対策。皮膚の光老化を防ぐという意味でも重要です。
ニキビや毛穴詰まりが気になる場合は、症状に応じて、
- レチノイド
- サリチル酸
など、比較的研究されている方法を検討します。症状が強ければ皮膚科へ相談する。
とても地味です。でも、蒸す。押し出す。冷水で締める。を繰り返すより、皮膚科学的にはずっと筋が通っています。
「毛穴ゼロの肌」は存在する?
SNSでは、毛穴が一つも見えない肌をよく見ます。
でも、人間の皮膚には毛包があります。つまり、毛穴があること自体は正常です。
さらに現在のスマートフォンには、
- 美肌補正
- 画像処理
- 照明
- フィルター
があります。広告写真ならさらに、メイク、ライティング、レタッチなども加わります。
画面の中の肌と、鏡の中の自分の肌を、同じ条件で比較してはいけません。
毛穴は「敵」ではない
毛穴からは毛が生えます。皮脂腺から出た皮脂も皮膚表面へ運ばれます。
つまり毛穴は、消すべき欠陥ではありません。身体に最初から備わっている正常な構造です。
美容で目指したいのは、「毛穴をゼロにすること」ではなく、「健康な皮膚を保ちながら、必要なら目立ちにくくすること」ではないでしょうか。
今日から一つだけ覚えてください
蒸しタオルを使うこと自体が悪いわけではありません。気持ちいいなら使って構いません。冷水で顔を洗うのが好きなら、それも構いません。
ただ、温めたから毛穴が開いた。冷やしたから毛穴が閉じた。と考える必要はありません。
毛穴は、開けたり閉めたりするドアではない。
これだけ覚えておいてください。
美容情報を見るとき、「毛穴を開く」「毛穴を閉じる」という言葉が出てきたら、少しだけ立ち止まって考えられるようになります。
身体の仕組みを知ると、必要のない美容法を一つ減らせるかもしれません。それも立派なスキンケアです。
美容の”常識のウソ”を科学で検証したまとめはこちら → 美容の常識を科学で検証【まとめ】
主な参考文献
- Lee SJ, et al. Facial Pores: Definition, Causes, and Treatment Options. Dermatol Surg. 2016.
顔面の毛穴が目立つ原因、皮脂、加齢、治療法などについてまとめたレビュー。PubMed - Kim BY, et al. Sebum, acne, skin elasticity, and gender difference – which is the major influencing factor for facial pores? Skin Res Technol. 2013.
顔面毛穴の大きさと皮脂分泌、年齢、性別、皮膚弾力性などの関連を調べた研究。PubMed - Rawlings AV. Molecular basis for stratum corneum maturation and moisturization. Br J Dermatol. 2014.
角層の構造、水分保持、皮膚バリアについてのレビュー。PubMed - Williams HC, et al. Acne vulgaris. Lancet. 2012.
面皰形成を含む尋常性ざ瘡の病態や治療についてまとめたレビュー。PubMed - Zaenglein AL, et al. Guidelines of care for the management of acne vulgaris. J Am Acad Dermatol. 2016.
レチノイドやサリチル酸を含むニキビ治療についてまとめた米国皮膚科学会の診療ガイドライン。PubMed
✍️ この記事はTOM さんの寄稿をもとに構成しました。(サイト → enishi-note.site)


